地表物質が流される仕組み
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地表面を水が流れる仕組み」で紹介したように,地表流の発生には必要条件があります。そのひとつは激しい雨が降る沖縄の気候環境ですが,地表面の状態も考えないといけません。
沖縄の山地や丘陵地のほとんどは,濃密な植生に覆われています。豊かな森林があれば蒸発散や浸透が活発になるので,地表流はあまり発生しません。
しかし開墾された山地や丘陵地はどうでしょうか。本部半島にはパイン畑がたくさんあります。パイン畑をみたことのある人ならわかると思いますが,表土がかなり露出していますよね。しかも,耕地は平らではなく,傾斜しています。
表土がむき出しで傾斜がついた地表面に強い雨が降れば,地表流が発生します。これが表土を削り(侵食),削られた土の粒子は河川に運ばれ(運搬),河口などに積もっていきます(堆積)。
侵食・運搬・堆積作用は,地形を変える自然の営みです。自然環境の中では,これらの作用によって,長い時間をかけて地形が変化していきます。しかし,人間活動は,地形変化を加速させたり,自然環境下で発生しない地形変化を引き起こしたりします。
ところで,赤土の流出は,サンゴの生育にもダメージを与えます。礁をつくるサンゴ(造礁サンゴ)は,共生している藻類の光合成によって生きる力を得ているので,海が濁ると大変です。私たち人間は,山と海が繋がっていることを,常に意識しないといけませんね。
文責:尾方隆幸
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